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「バク先輩は私が先輩と同じ、ナルク孤児院に居たことご存知でしたか?」
「ん? あぁ、らしいな。その当時は知らなかったけど、お前のこといろいろ調べてるうちにたまたまな……」
「調べた!? 私を……ですか!?」
思わず声の上ずるイーサ。
バクは小さく頷くとゆっくりと会議室の中を歩きだす。
「当然だ。オレとお前、思想や気概は違えど、似通った境遇を辿ってきた世界でたった一人の同志と呼べる存在だ。興味を持つなってほうが難しい……。
やり場の無くなった苦しみも悲しみも……きっとお前となら共有できる。そんな気がするんだ」
そう言うとバクはイーサの眼の前で足を止める。
先程まであれだけ鋭く光っていた瞳はすっかりとすぼみ、
じっと真剣な眼差しでイーサを見つめていた。
突然のバクのしおらしい態度に慌てるイーサ。
バクは照れるように薄紅色に染まった頬を指でこする。
「イーサ、その……なんかこんなこと面と向かって言うのは恥ずかしいんだけどさ……お前の力が必要なんだ。
だからオ、オレの」
しどろもどろに喋るバクを前に
イーサの胸の鼓動はドクドクと脈打ち、極限までその速さを増してゆく……。
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