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「……ハァ…ハァ……ゲホッゴホッ……」
至る所で耳の潰れるような爆音が鳴り響き
辺りには人の焼ける生臭い匂いがたち込める。
無惨に倒壊し瓦礫と化した建造物からは眼の眩むような真っ赤な炎が燃え盛り、
立ち上るどす黒い煙は真昼の青空を薄暗く染め上げる。
そんな叫びと悲鳴が交錯する地獄の中で
幼き日の少年は走っていた。
破れかけ煤のついたみすぼらしい服を羽織ったその少年は
幾つもの死体の転がる瓦礫の中を死に物狂いで駆けていく。
手には長い鎖のついた指輪。
-何もできなかった-
そんな後悔が渦巻くたびに少年はそれを強く握りしめる。
震える唇を噛み締め呟く。
「…………許さない」
あどけない少年の口からでたとは思えないほど悍ましい声色でそう吐き捨て、
少年は黒煙の中へと姿を消した……。
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