祖父の古城にて

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「この子にしようかな。」 と、菫が目を留めたのはペパーミントグリーンと白の縞模様のサテン生地に、たっぷりとしたレース使いが可愛らしいアフタヌーンドレスだ。 「可愛いわ。とっても。」 早速トルソーから脱がせて、自分の部屋へ持って行く。 コルセットをメイドに頼んで絞めてもらって、ドロワーズなど下着類を装着。 靴下も可愛らしいレースをあしらった絹の靴下である。 そして、いよいよドレスに袖を通す。 ドレスの背中のボタンもメイドに留めてもらう。 靴もドレスに合わせてペパーミントグリーンの物を履く。 こんな風に、心おきなくコスプ..いえ、服飾研究ができるのも、この古城が、かなりのどかな人口の少ない土地にあるからである。 「素敵!」 大きな鏡の前に立って、ドレスを見つめる菫。 「お嬢様、ヘアースタイルはいかがなされますか?」 メイドが尋ねる。 「このままで良いわ。 ありがとう。 自分の仕事に戻ってね。」 小さな時から度々フランスに訪れている上に、中学、高校とフランス語の授業を取っている菫は、フランスが得意であるから訛りが強めのメイドとも難無く会話が出来る。
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