36人が本棚に入れています
本棚に追加
『よく倒したわね……』
『うん、まあ……』
完全に運任せだった。
太陽を背にしたジャンプ切りなんかで倒せるはずがないのは僕様も理解していた。
だから、僕様は空中で剣を捨てた。
もちろん、投げる動作なんかをしたらバレてしまうので、振り上げた後に手を離しただけ。
それからイグドラシル本体はショートレンジ・バズによって吹き飛ばされ、残った剣だけが圧倒的な魔力活性値でブレイズの首をはねたのだ。
逆光で見えないので防がれはしないだろうとは思っていたが、そもそも当たらないだろうとも思っていた。
なぜなら、剣の魔力活性部分がブレイズに当たるかも怪しいし、ブレイズが更にそれを先読みして少し動けばそれで外れる。
というか、読まれていた。
ブレイズは少しだけ撃ちながら移動していた。
僕様の狙いがいい加減で、その移動した先に剣が飛んで行っただけだ。
逆光が無ければ、動いてもらえてすらいなかっただろう。
だからこの勝利は、完全に偶然の不細工な勝利。
実際、外れた後に武器を拾って帰ることばかり考えていた。
「よっこいしょ」
アカネはファントムを座らせて、機魔から降りていた。
「ほら、サイトくんも降りて。降りようと思ったら降りられるから」
言われるままに僕様はイグドラシルを降りると、アカネと一緒にブレイズのコクピットからパイロットを引き摺り出した。
確か名前は罰樹。
綺麗なお姉さんだった。
アカネより少し年上ぐらいで、綺麗な髪の毛をしているのに適当に切ってあるのが勿体無いと思った。
服はジャージみたいな見た目の生地が固そうなヤツ。
「あー、魔力なくなって死んでるけど、多分大丈夫かしら……リザレクション」
アカネがそう言うと、罰樹は薄緑の光を纏った。
「よし、生き返ったわね」
「凄いね。生き返らせられるんだ」
「まあね。でも専門は召喚魔法だから、ああいうふうに下半身が無かったりすると無理だけど」
そう言って、アカネは生々しい死体を指差した。
人を撃ち殺したことがあるはずなのに、そんな死体を間近でみると、結構気分が悪くなった。
「あんまり反応しないのね。
それともあんな死体が普通な世界から来たの?
……まあ、私としては一々反応されない方が助かるわけだけど」
僕様は少しだけこの世界が怖くなった。
けれども、あんな理で動いている世界よりは100倍マシだと思った。
最初のコメントを投稿しよう!