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その後、サンダーの説明だけでは要領を得なかったので、アカネから説明を受けることになった。
部屋を与えてもらった僕様は、晩御飯の片付けが終わるまでそこで待っているように言われた。
僕様は片付けの手伝いを申し出たけれど、どうやらアカネは家事が趣味らしく、人の楽しみを取るなと追い返された。
「僕様への説明より趣味を優先……か」
「……サイト……」
部屋に行くのもなんだか気が引けて、どうしようかと迷っていると、フリーザーに声を掛けられた。
「え? 僕様?」
「うん」
「なにか用かな?」
「どうして……サイトは……そんなに落ち着いて……いるの」
「え?」
「異世界に召喚されて……戦わされて……説明も受けてない……のに……」
なんだ、そんなことか。
「僕様は、自分の居た世界の理を否定した。だから、どんな形であれ僕様の居た世界と違う理の世界に居られることは、僕様の望み通りなんだよ。
もしここが灼熱の砂漠で数時間後の死が確実だとしても、あんな理で動いてる世界でないというなら、それだけで僕様は満足なのさ」
「……変なの」
「そういうフリーザーちゃんこそ、変だよ。
生け贄にされるためだけにここに居るなんてさ」
「……私だって……生け贄は……嫌」
「あれ? そうなんだ」
「……アカネに強制されて……居るだけ」
「……そうなんだ」
「でも……ここが……今までで一番……マシ」
「……そうなんだ」
「……同情した……? かわいそう……?」
「別に」
「……ふうん」
「僕様よりは、マシな境遇だと思うよ」
「……そう?」
「だって、君は世界の理を否定するほど絶望しちゃいない。
僕様は世界の理を否定するほど絶望した」
「……」
「それこそ、何の根拠もない幻想にすがるほどね」
「……ごめんなさい」
「……はっ」
何を話しているんだ、僕様は。
「……いや、僕様の方こそごめん。
君のことをロクに知らないのに、僕様の方が不幸だと決めつけて……」
「ううん」
「え?」
「あなたは不幸……不幸なサイト……そうでしょう……?」
「あ……うん」
「だったら……私が……同情してあげる」
「いいよ、別に」
「ううん……させて……私も……同情する側に……なってみたい……から」
「サイトくーん!」
突然、アカネの声が割って入った。
「家事終わったから、部屋来て」
「……了解。
またね、フリーザーちゃん」
「……うん」
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