戦乱の火種

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戦乱の火種

僕様は知っている。 僕様が人として欠けていることを。 でも僕様は、人は誰しも欠けていることを知った。 人はみな、欠けている部分を、隠して、騙して、生きているだけなんだ。 僕様はそれができなかっただけ。 人として生きるには、あまりに欠けすぎていただけ。 欠けすぎているのに、求めてしまうものが大きすぎて、結果、なにも求めていないのと同じになる。 なにも求めていない人は、人として成立しない。 だから僕様は、人として生きられなかった。 そんな僕様を満たしてくれたのが彼女だった。 彼女は僕様の全てになった。 僕様は人になった。 彼女に満たされて、より彼女を求めるために人になり、より彼女を求めることで人になった。 でも、彼女は消えた。 だから僕様は絶望した。 この世界を恨んだ。 そして、自分が人になっていることに気付いた。 彼女を求める自分が、人であることに。 けどそれは苦痛でしかなく、また、彼女がいない限りずっと苦しむのだ。 こんなことになるのなら、人にならなくば良かった。 彼女が現れて消えてからの違いは、僕様が人になったことと、苦しくなったことだけ。 世界は僕様を苦しめるためにあるのか。 きっとそうだ。 ああ、 くるしい…… 苦しい…… 狂しい…… くるしい……
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