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「サイトー」
その後、部屋で僕様が着替えていると、ファイヤーがそのふすまを開けた。
「きゃあああああ!!」
「あ、悪イ!」
ファイヤーは顔を赤くしてふすまを閉めた。
……あれ?
「シチュエーションの男女が逆だよ!!」
「言われてみれば全くその通りだ!!」
その言葉に、ファイヤーはアカネのような鼻血ばっかり出してる変態ではないことを確認し、僕様はホッとした。
ホッとしている時点で負けなのかもしれないが、悲しくなるのでそれ以上考えないことにした。
「そのままでいいから聞いてくれ」
「あ、うん」
「キングダム、フリーダム、デスティニーの関係はアカネから聞いたか?」
「大体はね」
「ならいい。
今日の行き先はキングダム領内のフリーダムのコロシアムにした」
「コロシアム……ね」
「というのもな、昨日罰樹に壊滅させられた商隊があっただろ?」
「それがどうかしたの?」
「あの中に、コロシアムの出場者が1人混じっていたらしい」
「……」
なんだか声が弾んでいる。
嫌な予感がするぞ。
「せっかくだから、空いた枠にお前をエントリーしておいた」
「……は?」
「そういうことだ。頑張れよ」
「えええええ!?」
「お、嬉しそうだな」
「どうしたらそう聞こえるのさ!!」
「……違うのか?」
「無理無理無理無理無理無理無理無理」
「いいじゃねーか。
それでお前を認めてやるんだからよ」
「……そう言われても……」
「なに、優勝しろとは言わねーさ」
「……はあ」
どうやら拒否権は無いらしい。
「……何回勝てばいいの?」
「あー、そう……だな」
少し考える間がある。
「ギブアップ無しで生きて帰って来られたらいいぞ」
「そんなに危険なの!?」
「ははははは」
「笑ってないで答えてよ!!」
「んじゃまた後でなー」
「あ、ちょ、待っ……」
足音が遠ざかって行った。
……前途多難。
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