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俺は報告のために、そのドアをノックした。
「どうぞ」
「失礼します」
許可を得た俺は、礼をしながら彼女の部屋に入った。
「報告します。キングダムのヴァルハラナイツがフリーダムのコロシアムを襲撃、ヴァルハラナイツは全滅、フリーダムは大打撃を受けた模様です」
「……マジ?」
「ええ、まあ、はい……」
「正直そこまで上手く行くとは思っていなかったわ……」
「どういうことですか?」
「えっとね、この間ウチの密輸商隊を襲わせたことがあったでしょ?」
「……はい」
「実は、あの場所とキングダムの一番近い関所の間に、フリーダムのコロシアムの入り口があるの」
「……はあ」
「コロシアムの入り口は偽装されているのだけれど、そこは、上手く情報操作をしてキングダムが気付くように仕向けて……」
「まさか……」
「あとはキングダムの誰かが早まってヴァルハラナイツを出動させればおしまいよ」
なんて夢物語。
そんなことができるのだろうか。
「あなた今、『そんなの無理』って思ったでしょ?」
「……いいえ。まあ近いことなら思いましたが……」
「そこは話を合わせて『どうしてわかったんですか』でしょ?」
「……」
「まあいいわ。正直私もここまで上手くいくとは思っていなかったし。
要は状況に一石を投じてみたかっただけよ」
「なるほど」
「それでも、危険を冒してまでヴァルハラナイツに罰樹と同じ処理をした甲斐はあったようね」
「……」
「フフフ」
やはりこのサクラは怖い人物だ。
敵に回したくない。
味方にいたとしても、俺自身がいつ罰樹や密輸商隊のように捨て駒にされるかもわからない。
「そうと分かっていても、今のデスティニーには貴女様の力が必要なのでしょうね」
「そうね。なんだかんだで諸刃の剣は強いのよ」
そう言ってから、サクラは遠い目をしてこう続けた。
「ずっと剣でいられたら、ここに私はいないのだけれど」
その意味は解りかねたが、俺に向けた言葉ではないようなので、言及はしないことにした。
もう一つの理由は、そんな目をする彼女に俺が少しだけ惹かれてしまったからだ。
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