機魔界戦記の始まり

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機魔界戦記の始まり

ここは、とある世界の森の中の地下シェルターである。 「フリーザー!!」 がらがらぴっしゃーん!! その一室の扉が大きな音を立てて開かれた。 壮大な地下施設は、その主の嗜好によって和風に設計されている。 だから、扉も引き戸だ。 音を立てた少女は十代後半の見目をしており、和服を動きやすく改造した水色の服を着ている。 そして、ワクワクとした表情で息を切らしているのだ。 さらにその腕には、不必要に大きな……そう、一辺80cm程度の立方体の形をした本が抱えられていた。 「アカネ……? ……なに?」 部屋の中は畳が敷いてあり、きちんとすれば静櫃な和の空間になるのだろうが、テレビやゴミ箱などの雑多な生活感が、昭和の家庭のような雰囲気にしてしまっている。 その中央で、雑誌を枕に寝ている少女が1人。 十代前半だろうか、全体的に色素が薄く、白いワンピースのみを身につけて、銀色の長い髪の毛を畳に散乱させている。 「ホラこれ見て!!」 「ぐふっ」 アカネと呼ばれた少女は、手にした本をフリーザーと呼ばれた少女に投げつけた。 それは頭に嫌な音を出して衝突し、フリーザーをのけ反らせた。 「……痛い……」 「ね!? 凄いでしょ!?」 「……凄い……痛い……。 武器としては優秀……と、思う……」 「そういう意味じゃなくて!! あなたその本がなんだかわからないの!?」 言いながら、アカネは押し入れを漁り始める。 「……わからない」 「きゃっ!!」 押し入れの中のゴミゴミとしたよくわからない物体の山が崩れるのを、アカネは避けた。 「それはね!! 『召喚の書』なのよ!!」 「はぁ……」 完璧に崩れるのを待ってから、アカネは再び漁り始めた。 「異世界から、とんでもなく強い人を召喚するの!!」 「……はぁ」 「あった!!」 アカネは崩れた山から、一振りの太刀を取り出した。 「でも、それには生け贄が必要なのよ。それも人」 「……はぁ」 「だからちょっと、死んで」 アカネは太刀を抜いて、フリーザーに向けた。 「…………え?」
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