機魔界戦記の始まり

2/12
前へ
/45ページ
次へ
目を覚ますと、そこは何も無い場所だった。 本当に何も無い。 床も天井も無い。 明るさも暗さも無い。 世界の全てを足して割ったような、平均という意味に近い、何も無さ。 浮いてもいないし立ってもいない自分。 それだけが確かだ。 「おはよう」 そして、何も無い空間に突然人が現れた。 しかし僕様は驚かなかった。 いや、驚けなかった。 スッと意識に滑り込むように現れたからだ。 その人物は女の姿をしていた。 一枚の大きな布を身に纏っている。 「おはよう」 僕様は女にそう返した。 「……驚かないの?」 「何に?」 「この空間とかに」 「驚いて欲しかったのかい?」 「少しは」 「今から驚いてみせようか?」 「いいよ、もう」 女は呆れたように頭を押さえた。 「それにしても、君みたいな子どもがここに来るなんてね」 「失礼だな。僕様はこう見えても17歳だ」 「17歳は子どもだよ」 そう言ってから、女は僕様の頭に手を乗せた。 「まあ、12歳ぐらいに見えたけど」 「あっそ」 僕様は不機嫌を隠さずに女の手を払った。 「君が聞いてくれないから私から説明するけど、ここは、ハザマ。世界の理から外れた人の来る場所」 「……」 「君の世界の理がなんだか知らないけれど、君はそれを否定したみたいだね。それって割と有り得ないことなんだけど」 「……ああ」 僕様はそれに凄く心当たりがあった。 「確かにね。僕様は世界を否定したよ」 「私が言いたいのはそういうことじゃなくて……ほら、世界を否定しようとすることは誰にだってできる。誰にだってって程じゃないとしても、1000人に1人ぐらいは。 けど、世界を否定するってことは……もっと重たいって言うか……とにかく致命的な何かをしないといけないの」 「それなら、十分に」 「……そう」 女は何かを悟ったような、諦めたような雰囲気を出した。 その瞬間、僕様の体が光り始めた。 「あれ? これは……」 「ここはハザマだから、そう長居はできないの。 君はまた、別の世界に飛ばされる」 「別の世界……って」 「君は元の世界には帰れないけれど、別の理を持った世界に行く。 その世界が君を呼んでいるから……」 「……最後に1つだけ、聞かせて」 「なに?」 「君は……なに?」 「……ハザマの人、だよ」 そこで一旦、僕様の意識は途切れた。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加