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目を覚ますと、そこは何も無い場所だった。
本当に何も無い。
床も天井も無い。
明るさも暗さも無い。
世界の全てを足して割ったような、平均という意味に近い、何も無さ。
浮いてもいないし立ってもいない自分。
それだけが確かだ。
「おはよう」
そして、何も無い空間に突然人が現れた。
しかし僕様は驚かなかった。
いや、驚けなかった。
スッと意識に滑り込むように現れたからだ。
その人物は女の姿をしていた。
一枚の大きな布を身に纏っている。
「おはよう」
僕様は女にそう返した。
「……驚かないの?」
「何に?」
「この空間とかに」
「驚いて欲しかったのかい?」
「少しは」
「今から驚いてみせようか?」
「いいよ、もう」
女は呆れたように頭を押さえた。
「それにしても、君みたいな子どもがここに来るなんてね」
「失礼だな。僕様はこう見えても17歳だ」
「17歳は子どもだよ」
そう言ってから、女は僕様の頭に手を乗せた。
「まあ、12歳ぐらいに見えたけど」
「あっそ」
僕様は不機嫌を隠さずに女の手を払った。
「君が聞いてくれないから私から説明するけど、ここは、ハザマ。世界の理から外れた人の来る場所」
「……」
「君の世界の理がなんだか知らないけれど、君はそれを否定したみたいだね。それって割と有り得ないことなんだけど」
「……ああ」
僕様はそれに凄く心当たりがあった。
「確かにね。僕様は世界を否定したよ」
「私が言いたいのはそういうことじゃなくて……ほら、世界を否定しようとすることは誰にだってできる。誰にだってって程じゃないとしても、1000人に1人ぐらいは。
けど、世界を否定するってことは……もっと重たいって言うか……とにかく致命的な何かをしないといけないの」
「それなら、十分に」
「……そう」
女は何かを悟ったような、諦めたような雰囲気を出した。
その瞬間、僕様の体が光り始めた。
「あれ? これは……」
「ここはハザマだから、そう長居はできないの。
君はまた、別の世界に飛ばされる」
「別の世界……って」
「君は元の世界には帰れないけれど、別の理を持った世界に行く。
その世界が君を呼んでいるから……」
「……最後に1つだけ、聞かせて」
「なに?」
「君は……なに?」
「……ハザマの人、だよ」
そこで一旦、僕様の意識は途切れた。
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