プロローグ

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それから私は一生懸命勉強した。成績が良ければ何かと便利だということは知っていた。 中学でも常にいい成績をとった。塾に行っている子達と上位を競えた。可哀想なお母さんの慰めになりたかった。高校も、奨学金制度を狙って真剣に探した。 結局それは全部無駄になった。中学三年生の冬。お母さんが死んだ。 飲酒運転の大型トラックにはねられて即死だったらしい。 涙が出なかった。私は今度は誰を哀れんだらいいのだろう。ああ、一番可哀想なのは私じゃないか。自分を哀れんで泣くなんてことはしたくなかった。 慰謝料を貰った。それで葬儀を出した。いろんな人がいろんなことを言って言ったけれどほとんど覚えてはいない。 ただ、担任の先生の「うちに住めばいい」って言葉がありがたかった。心から感謝したのをおぼえている。 その後、中学は無事卒業。 高校はギリギリで進路を変更して就職をしようかとも考えたのだけど先生の勧めで進学することにした。 そして高校の入学式前日に私は腰まであった髪を切った。 まだ肩くらいまではあるけれど(いきなりショートにするにはちょっと惜しかった)(せっかく伸ばしたのだ)、けじめのつもりだ。 私は高校入学を期に、先生の家を出た。今日から一人で生活していく。 がんばるよ、と両親の遺影代わりのツーショット写真に手を合わせて入学式に向かう。 桜咲く、始まりの季節に。 あとがき#→
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