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「地球に回線を繋げ!」
土方は通信士に声を荒立てた。
「通信不能!強力な妨害電が発せられている模様です」
護衛艦夕凪のブリッジに動揺が走った。ガミラス戦終結から一年余、久しく訪れた平和に慣れた乗員に現実の事として思われなかった。
土方は自動化されたブリッジを見渡した。イスカンダルからもたられた波動原理は人類に大いなる恩恵を与えたが、闘争の牙をも取り去ったようだ。かつて滅亡を賭して闘った気概は、もはや見られなかった。人類は太陽系の開発に窮窮として、防衛軍も私涼海賊相手の戦闘しか経験してこなかった。
‥この敵はガミラスではない。土方は新たな敵を予感した。滅亡に追い込んだ敵ながら、ガミラスには武士道の気概があった。
「レーダーに艦影は!」
「距離、20宇宙キロ、機影多数」レーダー員の悲鳴が艦内に響いた。
「朝霧、夕霧に転進を命じよ。夕凪以下、護衛艦は左舷30度の位置へ直進。本艦に続け!」
朝霧、夕霧には11番惑星の開拓団の家族が乗船していた。通常の戦闘教本では、輪形陣の防御となるが、未知なる敵が大編隊をもって攻撃を開始しようとしている以上、航空母艦を含む機動艦隊が予想できた。
‥妨害電波、航空機のアウトレンジ‥土方の脳裏に殲滅戦の文字が浮かんだ。
護衛艦隊を敢えて横切らせ、輸送船の反対方向にとったのは、敵が戦闘艦だけを狙う慈悲に望みを託したためだ。
「対空戦闘用意!」
輸送船だけでも救いたいものだ‥
土方は帽子を被り直しながら命令を発した。
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