一、

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紹介を兼ねた朝礼は程なく終了した。 ぞろぞろと社員達は会議室から出て行った。 浅羽は皆が部屋から出るのを最後迄見ていた。 彼自信は全く動こうとはしない。ただ右手を小さく動かし、よく見ると口を少し開いて、 「先、行って下さい」 と言って、皆を促していた。それは謙虚さなのか、何処かで身につけた彼なりの新人としての処世術なのか、はたまた余り他人と係わり合いになりたくないと言う思いの表れなのかは、よく分からなかった。 結局、部屋の一番奥に居た大内が最後の一人になり、浅羽はそれをも先に行ってくれと、手を扉の向こうに向けていた。 大内はこれから浅羽と共に働かなければならない。 彼とはコミュニケーションを、なんとしても取らなければいけないと、大内は思った。 だけど、デザイナーとはそんな生き物なのかもしれなかった。 そもそも他人と上手く付き合える位なら、この仕事を選んではいない。 自分の頭の中と手元で、誰とも話さずに一日作業をする事はざらな事だった。 いや、寧ろそれが楽なのだ。 他人と、ましてや金銭が絡むクライアントと一対一で話すなど、苦痛以外の何ものでもない。 言いたい事は全て作ったモノに書いてあるし、表現されている。 それについて、とやかく言うのもイヤだった。 それが出来れば、独立でもして自分で営業をかけて、好きなモノを作っていられるかも知れなかった。 しかし、世の中の大半のデザイナーやオペレーターはそれをしない。できないのだ。 だが、大内は何の為に浅羽がウチに雇われたか思い出していた。 彼とは何でも話せる様にしなければ、何の意味もないのだ。 苦手だとかそんな事は、お互いに言っていられなかった。
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