~事の起こり~

3/9

80人が本棚に入れています
本棚に追加
/276ページ
『『ごちそうさまー!』』 ご飯を食べ終わり、子供達が走り回る。 『はいはい、うるさくしないのー』 そんな子供達をまとめるのはいつも有紀。 『あはは、皆元気だね~』 『いい事ですよね』 私はそんな微笑ましい光景を見ながら、食後のコーヒーを竜紀に持って行くのが日課で。 『はい、竜紀くん』 『ありがとうございます』 お礼を言い、コーヒーを手に取る竜紀。 私もココアを片手に子供達を見て笑う。 ――そんな幸せな毎日。 ずっと続くといいのに…そう思ってた。 『――ふぅ…』 夜の9時。 子供達もようやく寝静まり、皆それぞれ部屋に戻った。 これからは大人の時間だ。 『裕里さん? 大丈夫ですか?』 ため息をついた私を心配した竜紀が、パソコンを打つ手を止めて尋ねてくる。 『あぁ、ごめん… ちょっと疲れちゃって』 苦笑いでそう答えた。 幸せだけど、子供達は元気すぎて少し疲れる。 『…あまり無理はしないように。 今日はもう寝た方が―――』 竜紀がそう言いかけた、その時。 ……カタン。 『?何…今の音』 リビングで小さな音が鳴った。 『え、何?』 聞こえなかったらしい竜紀は首を傾げている。 『今、何か音がした…』 ぞくり。 同時に背筋を冷たいものが走る感覚。 ……とても嫌な予感がした。 『ちょっと見てくるね…』 恐る恐るそう告げ、リビングへと繋がる扉に手をかけた。 『あ、待って下さい。俺も行きます』 心配したのか、竜紀も慌てて立ち上がる。 ――ガチャ。 そして、扉を開く。 誰もいないリビングは真っ暗で…‥ とても静かだ。 『電気…』 竜紀が先にリビングに入り、手探りで電気を探す。 パチン。 小さな音と共に電気が点く。 そして――…‥ 『た、竜紀くん…』 真っ先に目に入ったのは真ん中に置かれた真っ白なテーブル。 そこは夕方、ご飯時に賑わった場所で… 『……何だ、これ』 そこに近づく竜紀。 テーブルの上には、片付けられた料理の代わりに… カサ、紙の擦れる音を立てて竜紀がそれを手に取る。 ――そう、手紙。 料理を片付け、何も残っていなかったはずのテーブルの上にあった一通の手紙。
/276ページ

最初のコメントを投稿しよう!

80人が本棚に入れています
本棚に追加