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『『ごちそうさまー!』』
ご飯を食べ終わり、子供達が走り回る。
『はいはい、うるさくしないのー』
そんな子供達をまとめるのはいつも有紀。
『あはは、皆元気だね~』
『いい事ですよね』
私はそんな微笑ましい光景を見ながら、食後のコーヒーを竜紀に持って行くのが日課で。
『はい、竜紀くん』
『ありがとうございます』
お礼を言い、コーヒーを手に取る竜紀。
私もココアを片手に子供達を見て笑う。
――そんな幸せな毎日。
ずっと続くといいのに…そう思ってた。
『――ふぅ…』
夜の9時。
子供達もようやく寝静まり、皆それぞれ部屋に戻った。
これからは大人の時間だ。
『裕里さん?
大丈夫ですか?』
ため息をついた私を心配した竜紀が、パソコンを打つ手を止めて尋ねてくる。
『あぁ、ごめん…
ちょっと疲れちゃって』
苦笑いでそう答えた。
幸せだけど、子供達は元気すぎて少し疲れる。
『…あまり無理はしないように。
今日はもう寝た方が―――』
竜紀がそう言いかけた、その時。
……カタン。
『?何…今の音』
リビングで小さな音が鳴った。
『え、何?』
聞こえなかったらしい竜紀は首を傾げている。
『今、何か音がした…』
ぞくり。
同時に背筋を冷たいものが走る感覚。
……とても嫌な予感がした。
『ちょっと見てくるね…』
恐る恐るそう告げ、リビングへと繋がる扉に手をかけた。
『あ、待って下さい。俺も行きます』
心配したのか、竜紀も慌てて立ち上がる。
――ガチャ。
そして、扉を開く。
誰もいないリビングは真っ暗で…‥
とても静かだ。
『電気…』
竜紀が先にリビングに入り、手探りで電気を探す。
パチン。
小さな音と共に電気が点く。
そして――…‥
『た、竜紀くん…』
真っ先に目に入ったのは真ん中に置かれた真っ白なテーブル。
そこは夕方、ご飯時に賑わった場所で…
『……何だ、これ』
そこに近づく竜紀。
テーブルの上には、片付けられた料理の代わりに…
カサ、紙の擦れる音を立てて竜紀がそれを手に取る。
――そう、手紙。
料理を片付け、何も残っていなかったはずのテーブルの上にあった一通の手紙。
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