~事の起こり~

4/9

80人が本棚に入れています
本棚に追加
/276ページ
『な、何で…』 声が震える。 その手紙には、見覚えがあった。 『……確かにしまっておいたハズなのに』 手に取った手紙を見つめながら竜紀がぽつりと呟く。 ――それは、数日前に届いた屋敷からの手紙だった。 十年前のあの日、過去を変えて全てが元通りになった。 そしてそれからしばらくは屋敷からお礼の手紙が届いていたのだけど… ある日を境に手紙がぱったりと途絶えてしまった。 皆は気にしないでいい、と言ってくれたけど… 私は気になって仕方がなかった。 しかしそのまま月日は流れ――…‥ 屋敷の事などすっかり忘れかけていたある日、私は見てしまった。 この家に届けられた、あの手紙を。 最初に受け取ったのは竜紀で… 私を気遣かってか、手紙の事は内緒にしていた。 でも私は見てしまったのだ。 それを竜紀に告げると、 黙っていた事を謝りながら手紙を見せてきた。 そこには一言、 “悲劇は繰り返す” とだけ書かれてあった。 今更、どうして――? そう思ったが… やはり放ってなどいられなかった私は、とうとう屋敷に行く事を決意する。 ――…しかし、せっかく行ったのに 屋敷はなかった。 跡形もなく、消えていたのだ――…‥。 それが三日前。 諦めた私達は帰ってきた。 屋敷の事は忘れよう。 そう心に決めて…‥。 ――なのに、何で? しまっておいたはずのあの手紙がテーブルに? ……気味が悪い……
/276ページ

最初のコメントを投稿しよう!

80人が本棚に入れています
本棚に追加