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これは俺の人生で最も大切な人と一緒に過ごした思い出。
最初で最後の幸福。
俺には双子の弟がいる。
でも、弟は父と離縁した母に連れて行かれ会うことすら許されなくなった。
けれど、弟は俺の全てだった。
昔から父の会社を継ぐために厳しい教育を受けてきた。
そのうえ、友人ですら俺の意思は関係なく父の選んだ人達だけだった。
その中に俺が本当に心から友人だと思える人はいない。
けれど、弟の悠斗だけはいつも俺を理解し支えてくれた。
そんな弟が俺の世界の全てだった。
ある日、父と母の意見が食い違い母が家を出て行き悠斗と俺は引き裂かれた。
そして、俺は父に悠斗と母に会うことを禁じられた。
その時から俺は全てがどうでもよくなった。
けれど、時間が経つにつれ悠斗に会いたいと思う気持ちだけが増していった。
そこで16になる誕生日に俺は意を決して父に頼んでみることにした。
そして、何度も頼み込んで俺は一週間だけ悠斗との時間をもらった。
「ひろ」
「ゆう」
「久しぶりだね」
「もう、10年も悠斗と離れて暮らしていたからな」
「お父さんは相変わらず?」
「あぁ」
「でも、大翔が元気そうで良かった」
「悠斗もな」
「ありがとう」
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