2.月光列車

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†††††  ーー月の世界へ行く。  そう決意した私に、ひとつ頷いた満月は口を開いた。 「じゃ、行こうか」 「ふぇっ!?」  あの、まだ心の準備とやらが出来ていないんですけど!  私の心の声を無視して、満月は手を握って引っ張った。 「ちょっ、わっ!」  前につんのめってそのまま転ぶと思われた私の体は、地面に投げ出されることなく、ふわふわと浮いていた。  おっかなびっくりの体で満月の方を向いてみると、いたずらっぽく笑ってみせた。 「大丈夫だから」  その、たった一言なのに何故か嘘みたいに安心出来てちょっと戸惑ってしまう。  こくんと小さく頷く私を見て、満月は真っ直ぐ上を向く。  それが合図だったかのように、私達はぐんぐん上昇していった。
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