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「これは月光列車(ムーンライト・トレイン)
ここからはこれで月に行く」
満月が車体に向かって手を上げると、それに応えるかのように列車のドアが開いた。
それと同時に機関室の窓から気さくそうなおじさんが顔を出してきた。
「おっ、満月。やっと戻ってきたか」
その落ち着いた声に不機嫌さは感じられなかった。
「ごめん」
「この娘が、かい?」
おじさんが私の方に目線を投げて、私は慌てて頭を下げる。
「この人は車掌の昴(すばる)さん」
「天野あかりです」
怖ず怖ずと顔を上げると、昴さんと一瞬顔を見合わせる形になった。ふむふむと思案するように私を眺めていた昴さんは、やがてあたたかい微笑みをかけてくれた。
緊張が解きほぐれていくようだった。
「乗るよ」
紹介の終わった私の手を引いて、満月は列車の中へと入っていく。
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