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「……さむ」
相変わらず容赦のない風に、私は思わず身を縮こませた。
何で寒いんだろうーーそれはもうすぐ冬だから。
自問自答して溜息。寒いし気は重いし、気持ちは右下がり。
こんなにも鬱になってしまう理由のひとつになっているものを、鞄の中から探り出す。
進路調査票。
つまりは将来のこと。
はい、そこ。中学三年生のこの時期に遅すぎるとか思わないの。
漠然とした将来なら思い描くことが出来る。高校に入って、勉強して、卒業して、大学に進むか就職したりして……。
じゃあ、その後は?
何のために高校行って勉強するんだろうか?
分からない。
私は何がしたいんだろう。
分からない。
考えるたびに辿り着く答えはいつも同じ。じわりと黒い染みが広がるように、言い表せない不安が心を覆う。それがすごく怖い。
泣きそうになるのをぐっと堪えて上を向くと、真ん丸の月と出会った。
夜色に包み込まれた一面にぽっかりと浮かんでいる、白く輝く満月。
憎たらしいまでに眩しい光を放って。
ーー何よ、何よ。あんな手の届かない場所で光っちゃってさ。
「満月のバカヤローーッ!!」
人が通っていないことを良いことに、私は思いきり叫んだ。引っ込めたはずの涙が滲んできて、慌てて制服の袖で乱暴に拭った。
無性に悔しくなった。悔しさが勝っていたからこそ、私はそれに気付けなかった。
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