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「人のコト、バカ呼ばわりするのはひどいんじゃないの?」
頭の後ろから声が降ってきて、私は訝しげに振り返ってーー言葉を失った。
ついさっき暴言を吐いた満月をバックに、私と同い年ぐらいの少年が浮いている。
鳶色の髪の毛に琥珀色の瞳、この肌寒い日なのに薄手のシャツと細身の黒いパンツ、首にはマフラー。そしてブーツと実に軽装だ。
浮いていることにもびっくりだけど、何でこの人……光ってるの?
少年の体を淡い光が包んで、辺りに解き放っていた。その光は、そう月の光に似ていて。
私が固まってしまったのを不思議に思った少年は、やがて合点がいったのか軽やかに着地して目の前に立った。
「この光がダメなんだな」
すると、少年は開いた掌に体を包む光を集め始めた。ぎょっと目を剥く私をよそに、ひとつに集まった光を少年はぎゅっと握りしめた。再び手を開いた時には、あんなにあった光は跡形もなく消え去ってしまっていた。
この奇想天外な行為に、私の混乱のパーセンテージが一気に臨界点を超えてしまった。
でも、そのおかげで声が出たのだけれど。
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