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「そして、この光なんだけど……」
満月は申し訳なさそうに微笑んで、
「月の世界に生まれた者は皆、光を持っているんだ。自分の意志で自由に点けたり消したり出来る」
そう言った直後、掌の中で消えてしまった光がどこからともなく現れて満月の体をふわりと包み込む。
ーーこれは夢? それとも現実?
目の前で起こっていること、満月のこと、それらがどちらなのかを私は考えあぐねていた。
普段の私なら「こんな馬鹿みたいなこと」と一蹴していたに違いない。
だけど。
満月の琥珀に嘘の気配は感じられない。むしろ、真っ直ぐな眼差しに見つめられると……。
「……じゃない」
「えっ?」
ぼそりと呟いた私に満月が聞き返す。
当たり前のように話されて、そんな風に琥珀色を向けられたら。
「信じるしかないじゃない……」
認めた瞬間、何だか恥ずかしくなって私は思わず俯いてしまった。
頬の辺りが、妙に熱い。
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