11人が本棚に入れています
本棚に追加
「満月はどうして地球に?」
「必要なものがあって」
主語が抜け落ちているような満月の台詞に、私は思わず首を傾げてしまう。
「そのために地球の人の力を貸してほしくてね」
「と、言うと……?」
「月の世界へ来てほしいんだ」
満月と会ってからまだ数十分、飛躍し過ぎている現実に対して耐性が付いてきていると思ったのだけれど。まさか、そこまで行くとは。
ぽかんとしてしまった私に、満月はさすがに苦笑しながら、
「まあ、そんな見ず知らずの相手に二つ返事なんて出来ないよな」
そう言った満月の表情を、私は見逃さなかった。
満月の瞳に、一瞬だけど浮かび上がった焦燥を。
瞬きをすると消えてしまったけど、私は不思議と確信を持てていた。
「行く」
次には、口にしていた。
「行くよ、月の世界に」
言葉にしたら、それは揺るぎない決心になっていた。
目をぱちくりとさせていた満月は、やがて小さくありがとうと呟いた。
そして、月の少年は私を導く。
最初のコメントを投稿しよう!