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ドアを開けば、耳に入ってくるピアノジャズ。
いつものようにカウンターのスツールに座ると、目の前におしぼりが出される。
「ありがとうございます。それと、いつもの」
なんて、顔馴染みになったバーテンくんに注文する。
おしぼりで手を拭きながら、この半年前から来ているバーの空気を深く吸い込む。
やたら大きな溜息となって出て行ったけど、それも仕方ないのかもしれない。
仕事が大変なんだから。
そんなこと思っていたら、目の前に出されたいつものカクテル、ジンウォッカ。
「お仕事、お疲れ様です」
「うん。そう言ってくれるのはキミだけだよ、バーテンくん」
実はアルバイトなバーテンくんと話しながら、ゆっくりと流れる時間を楽しむ。
モダンでスタイリッシュなバーを見回しながら、また話に相槌を打った。
「それにしても、色々とスゴいですよね、お客さんは」
「ん?何が?」
途切れた会話を繋げたのは、そんなバーテンくんの言葉。
「気を悪くしたら申し訳ないですけど、ここってゲイバーですよ?男が一人でココに来るなんて、その筋の人にしか見られないっていうのに。まさか酒目当てで来てるなんて思いもしませんでしたから」
「ん~、ボクは酒が美味しい所なら、どこでもでも行くからね。あんまり関係ないよ、そういうの」
「でも、いくらそうでも普通にノーマルの人が来るっていうのがあまりないって話ですってば」
「ま、僕は衆道(男好き)の気は無いからね。あ、次はウォッカ。ロックでね」
「それに、そんなに酒に強いっていうものスゴいですよ」
なんて、話していた時だった。
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