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小ぶりの鉢植えを抱えて、木漏れ日が差し込む林の中を歩く。優しく初夏の日の光遮る林の中は涼しくて気持ちいい。
向かう先は村の境内。
すぐ息切れをしてしまう身体にうんざりしながら、それでも進む。
今日は彼はいるだろうか。
いたらいいな。
ちょっと息をついて、鉢植えを地面に置く。全然重くない鉢植えと全然遠くない距離を歩いただけですぐにこれだ。
全く健康じゃない身体が恨めしいったらない。
休憩してまた進もうとすると、林の木ががさっ、と鳴った。
「くーちゃん」
木の上に向かって声をかける。少し重い音がしただけだけど、彼だと分かる。
「…また、来たんですか」
ひび割れたような、重い声。
悲しそうな声だ。
半分はわたしのせいだと分かるから心苦しいが、それには気付かないフリをしておく。
「うん。来たよ。来るって言ったもの?」
「…」
下りて来ないし、返事も返ってこない。また一人で勝手に『ジセキノネン』とやらに苛まれているんだろう。
ネガティブだなぁ。
…いや、繊細と言ったほうがいいのかしら。この場合。
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