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こいつは俺にツッコミをしてほしいのだろう。
短い時間ではあったが、この少女を確認してからのことを振り返れば確かにツッコミどころしかない。
俺は迷った。ツッコむべきか、ツッコまないべきか。
ツッコんだら負けたような気がするし、ツッコまなければ漏れる。
考えるまでもなかった。漏らしてはならない。
「おい、お前」
幸い口は動いたので言葉を発することはできた。俺のその言葉に、少女の動きがぴたりと止まる。
止まってもヒゲダンスのポーズはそのままなのが腹立たしいが、今はどうすることもできない。ツッコむしかないのである。
少女との間に何らやら妙な静寂が訪れ、一呼吸おいてから俺は口を開いた。ツッコむために。
「なんでこんな夜中にツッコんでほしいんだ?」
何かを間違えた気がするがまぁ気にしない。少女の反応と言えば、まるで俺を家畜を見るような目で見ていた。そして次の瞬間、少女の口が開く。
「あはぁん?キミ、それホンキでいってるのぉー?ちょーぅありえなーいんだーけどー」
死ね。あ、失礼。思わず本音がぽぽぽぽーんしてしまった死ね。
「まあー?わたしのぉー、この美貌をー、美貌ッッッ!をー、前にしたらぁー、わからなくもないけどぉー、それってぇー」
そして少女は動けない俺の前までやってきて、ちっちっ、と指を振りながらこう言ったのである。
「は・ん・ざ・い、だゾっ(はーと)」
気づいたらマウントを取っていて気づいたら殴っていて気づいたら泣かせていた。
後悔はしている。もっと早く殴っておけばよかった。ふぅ。
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