一限目

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ノラ猫に引っかかれたと嘘を吐き、保健室で手当てをしてもらっていた。 「…分かるんだ」   「それくらい分かるわよ。本当はなんで付いた傷なの?」 保健教師は手当てを続けながら聞いてきたが私は答えなかった。 「あなた最近、よく保健室に休みに来てるわよね。この前も美術の授業を二時間も休んで。なにか悩みでもあるの?」 即答はできなかった。目の前の保健教師は、私の悩みを聞いたらどんな反応を示すのだろうか。 先生は信じてくれる?あの先生(担任)がそんなことするわけがないとか言わない?誰にも言ったりしない? 「まあ、なにかあったら休みの日に外で話を聞いてあげる。今までだって何人もの生徒の相談に乗ってきたんだから」 「…ありがとう。もうすぐ授業が始まるから教室に戻ります」 結局、喉まで出かけていた言葉を声にすることはできなかった。
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