95人が本棚に入れています
本棚に追加
ノラ猫に引っかかれたと嘘を吐き、保健室で手当てをしてもらっていた。
「…分かるんだ」
「それくらい分かるわよ。本当はなんで付いた傷なの?」
保健教師は手当てを続けながら聞いてきたが私は答えなかった。
「あなた最近、よく保健室に休みに来てるわよね。この前も美術の授業を二時間も休んで。なにか悩みでもあるの?」
即答はできなかった。目の前の保健教師は、私の悩みを聞いたらどんな反応を示すのだろうか。
先生は信じてくれる?あの先生がそんなことするわけがないとか言わない?誰にも言ったりしない?
「まあ、なにかあったら休みの日に外で話を聞いてあげる。今までだって何人もの生徒の相談に乗ってきたんだから」
「…ありがとう。もうすぐ授業が始まるから教室に戻ります」
結局、喉まで出かけていた言葉を声にすることはできなかった。
最初のコメントを投稿しよう!