一限目

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―――そして私はこの頃、幼稚園の時以来の恋をしていた。 相手は教育実習で数週間授業を受け持った大学生。 会って話ができるだけで幸せになれるような淡い恋だった。 教育実習が終わる日に合わせて、ビーズと刺繍糸で仕上げた手作りのストラップを準備した。 放課後に渡そうと、特進コースの授業が終わるのを自分の教室の席に座って待っていた。 たぶん憧れのようなものだ。 「ありがとうございました。憧れていました。」 そう言ってプレゼントを渡せればそれだけでいい。 ………教室の扉が静かに開く音がした。 担任がなんとも表現しづらい表情をして扉を(ふさ)いでいた。
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