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本来の通学路ではなく、駅に近い方の旧通学路を走り、駅を目指す。
悲しい。悔しい。
担任が触った物なんてもう好きな人に渡すことはできない。
教室からずっと止まらずに走ってきたので徐々に足取りが重くなっていく。
灰色だった空からポツポツと小雨が降ってくる。
旧通学路は痴漢や露出魔が頻繁に出没していたため、人通りが多い大通りを新通学路として学校側が定めていた。
しかし今は校則がどうとか、そんなことは言っていられない。
駅に抜けるまでまだ半分以上の距離が残っている。上がった息を少しだけ整え、再び足を早めた。
その瞬間、後ろから来た車のランプが私を照らす。担任がすぐに後を追ってきたらしい。
「送ってあげるから乗りなさい。」
運転席の窓を開けた担任が真顔でそう言った。
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