一限目

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私は学校に通い続けた。 誰にも言えないけれど、担任がとても怖かったけれど、通い続けた。 担任はあれからなにもしてこなくなった。 「まだ課題の提出ができてないじゃないか…。君達、やる気はあるの!?」 担任はイライラすることが増えた。声を荒げることが多くなり、かまわず苛立ちをぶつけるようになった。 言い返す生徒はいなかったが、皆明らかに戸惑いを隠せていなかった。 そして提出した私の絵の一部が毎回、少しだけ破られて返されるようになった。 『器の小さい男』 担任にピッタリの言葉だ。 結局、教育実習生にプレゼントを渡すことはできなかった。 もう一度準備する気力なんてなかったし、もうどうでもよくなっていた。 不意にチャイムが鳴る。一限目の始まりの合図だ。 教室の扉の外から、今年度から教職に就いたばかりの国語教師が申し訳なさそうに覗いている。 五分前に鳴ったHR終了のチャイムは担任には聞こえていなかったようだ。
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