一限目

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今年の春まで音楽の授業を受け持っていた中年の女性教師がいた。 しかし三年生になったばかりの私達に一度だけ授業を行った直後に持病が悪化し入院した。 そして非常勤講師として変わりに来たのが今の若い女性教師だった。 傷口は塞がり絆創膏も外したが、まだ赤みは引かないらしい。 「別になんでもないよ…。」 いきなりの質問だったので心の準備ができていなかった。 「…あなたが痩せてるのって、そういうこと。」 「え?」 この傷が私の体型と一体何の関係があるというのだろう。 「どういうこと?」と私は聞き返す。 音楽教師は「そういうこと!」と言うだけで何度聞いても答えを教えてくれない。 「楽しそうだな。」 ちょうど廊下を通り掛かった英語教師が私達に話し掛けてきた。
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