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「はい。では、183ページの三行目‥」
日本史の教師は、何事もなかったかのように授業を続ける。
振り向いてはいないが、教室中が気まずい雰囲気になっているのが分かった。
心臓の脈打つ音が一向に止まない。滲んでいた額の汗がやがてジワジワと集まり、頬を伝う。
「はい!一番前の席で寝ていたお前、答えなさい!」
その授業中、日本史の教師は何度も私を指命した。
『私が居眠りしていたのは夜、眠れないからなんです。担任が体を触るのをやめてくれなくて悩んでいるんです』
心の中の声は、もちろん誰にも伝わることはなかった。
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