6504人が本棚に入れています
本棚に追加
こぽ こぽ こぽ こぽ
紫音が、わたしを控え室に置いて、ホールに出ると、薫ちゃんがお茶を入れてくれた。
こんな真っ赤な色のハーブティーなんて初めてだった。
それに、花びらが一枚浮いているなんて……今まで見たこともない。
「まぁ、お飲みなさいな」
「は、はい」
薫ちゃんは、銀のトレイで頬づえをついた。
大きな身体を丸めてしげしげとわたしを眺めてる。
あんまり不思議そうにじっと眺めているので、だいぶ気まずい雰囲気だ。
いたたまれなくて、勧められるままにお茶を飲む……けど。
「ぅあ。すっぱぃ……でも……」
……おいしい……
良いにおいのお茶が、ずっと重かった心と身体をほっこり暖める。
初めてのお茶の味に驚いていたら、薫ちゃんがにこっと笑った。
「ローズヒップティって言うのよ。
気に入った?」
「はい!」
思わず元気良く答えたら、薫ちゃんがころころと笑う。
「良いお返事。お口に合えば嬉しいわ。
これ、あたしのとっておき、なの。
気に入ったヒトにしか出さないのよ」
薫ちゃんは、片目を瞑った。
「ねぇ、あなたのお名前、聞いていいかしら?」
「えと、守屋 春陽(はるひ)です」
「ふぅん。春陽ちゃん。可愛いお名前ね」
彼は楽しそうに言うと……少しだけ真面目な顔になった。
最初のコメントを投稿しよう!