猿かに合戦セット

3/11
240人が本棚に入れています
本棚に追加
/89ページ
昨晩、男は雨の中で傘もささずにいた為、髪もスーツも革靴もびしょびしょに濡れていた。 それでも、寒さは感じない。 付き合い始めたばかりの可愛い彼女と、これからデートなのだから。 濡れるのは失礼かな、とも思ったが、正直なところ、濡れてでも早く彼女に会いたかった。 それほど、惚れ込んでいたのだ。 髪の毛からポタポタ垂れる滴が、頬を伝っては落ちる。 まるで泣いてるみたいだな、と男は思った。 しかし今は泣く気分ではない。 「嬉し泣きってとこかな」 人知れず呟いて、自分で笑ってしまうのだった。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!