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昨晩、男は雨の中で傘もささずにいた為、髪もスーツも革靴もびしょびしょに濡れていた。
それでも、寒さは感じない。
付き合い始めたばかりの可愛い彼女と、これからデートなのだから。
濡れるのは失礼かな、とも思ったが、正直なところ、濡れてでも早く彼女に会いたかった。
それほど、惚れ込んでいたのだ。
髪の毛からポタポタ垂れる滴が、頬を伝っては落ちる。
まるで泣いてるみたいだな、と男は思った。
しかし今は泣く気分ではない。
「嬉し泣きってとこかな」
人知れず呟いて、自分で笑ってしまうのだった。
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