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暗い、とても暗い。この世の夜を全て集めて無理やり箱詰めしたような闇がアサギを包み込んでいた。
「ここは…どこ…?」
はっきりしない意識で周りを見るが、自分の姿以外まるで何も見えない。全くの暗闇。
―見つけた。
どこからともなく女の子の声が響く。
「誰…?」
―あなたはウサギさんでしょう?
突拍子もない問いかけに首を傾げるアサギ。だんだんに意識がクリアになってきた。
「…私は、アサギよ。」
―あら、そう。でもいいわ。イサギだろうがアサギだろうがウサギと大して変わらないもの。問題なのは名前よりも質(たち)なのだ。そうでしょ?
「分からないわ。何を言っているの?」
―なーんにも。…さぁ、道は開かれた。
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