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◆
「なぁぁぁぁっ!」
―まもなく○○○○○、まもなく○○○○○でございます。
クーラーの効いた車内で汗だくになって目覚めるアサギ。アナウンスがアサギの降りる駅名を言っている。
「な、なに…?」
嫌な夢を見た。漠然とした記憶しか無いがとにかく恐ろしい夢だ。
「疲れてるのかな?」
アサギは袖で額の汗を拭い、荷物をまとめる。スーパー日立が○○○○○駅に到着すると、アサギはさっさと下車する。暑い空気が冷えた体に程よく気持ち良い。
「よし、気持ち切り替え!せっかくの夏休み、謳歌しなくて何とする!!」
アサギは残る恐怖感を振り切り、笑顔を作る。階段を駆け上り、颯爽と改札を潜り抜けて、アサギは故郷の土を踏む。
「ただいま。我が故郷。…っ!?」
不意に冷たい風が駅を抜け、アサギを越えて町に吹いた。夏だと言うのに薄ら寒いその風はアサギの心に一抹の不安を残して空に消えたのだった。
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