第二章 公園とバミューダパンツ

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 田舎だけあって都心に比べると駅は格段に少ない。すると当然、自宅から最寄り駅まで四十分以上も歩かなくてはならないという家庭はざらなのである。アサギもそのうちの一人。  高い建物は少なく、夏の太陽が容赦なく照りつけてくる。 「車で迎えに来てもらうんだった……。アスファルトの反射熱が染みるぜ。」  一人ごちながら、大通りから脇道に曲がり住宅街へと入る。道路脇には未だにドブが流れており、夏の日光も手伝って独特の臭いが漂っている。さらに歩くと公園が見えてきた。子供の頃はよくあそこで遊んだものである。ふと普段は感じない郷愁を感じたアサギは何の気なしに公園の敷地に入っていった。 「いつも通りかかりはするものの、中に入るのは久しぶりね。」  水飲み場にブランコ、滑り台に、鉄棒、懐かしいものばかりだ。そして公園の中央に置かれているジャングルジム。 「ジャングルジムにもよくのぼったわね。」  と、軽く手をかけると、 「ぬあっちぃ!」  もの凄い熱さに手を引っ込めるアサギ。夏の太陽が鉄製のジャングルジムを熱していたのだ。
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