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気付けば、二人だけで缶を三本空けていた。量としては多くはないが彼らは話に夢中になってほとんど飲まず、二人で空けたにしては相当量の時間を消費したことになる。
その間もちろんゲームの誘いもあったが、それをことごとく断っていた。酒が入っているためか冷やかしの声があったが、二人は気にもかけない。
「ねえ、ちょっと暑くない?」
美奈の顔はほんのり赤くなっていた。原因としては暖房やゲームに興じる人々の熱気が考えられるが一番はやはり――
「ああ、アルコールが回ってきたかな。涼みにベランダ出る?」
「……でもコート持ってきてないよ」
「寒くなったらすぐ戻ればいいさ」
空になった缶と紙コップを部屋の隅に置かれたゴミ袋に入れ、二人は素早くベランダに出た。
「思ったより冷えるな」
「酔いも醒めちゃいそうだよ。ジャンパーでも借りれば良かったかな」
「でも、これを酔った頭で眺めても面白くはないんじゃないか?」
幸助は、目の前に広がる夜景を顎で示した。
「わあ……」
美奈の口から、思わずそんな言葉がこぼれた。いや、もはや言葉ではない。溜め息に似た何かだ。
この町の中心部では大きな道路が二つ、国道と県道が直角に交わっているのだが、それが光点の十字架として夜の町に鎮座している。それ以外の小さな道の街灯も、ビルや家の明かりも電車の光も、十字架を引き立てるためのイルミネーションに見えた。そのきらびやかな景色、切るような凛とした空気、それらがぼうっとしていた頭を一気に冷ました。いや、醒ましたと言う方が適切かもしれない。
「町を見下ろす丘に建ってるから、夜景がこんなに鮮やかに見えるんだな。しかも市街地から離れてるからほら、星も比較的多い」
星は彼らが住んでいる都会に比べて多いのであり、決して多く見えるわけではない。だが、それでも美奈の心をときめかすのには十分だった。
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