53人が本棚に入れています
本棚に追加
「当たらずとも遠からず。そういえば、天野さん何であんなに沈んでたの?」
「うん……何だかこのサークルあんま楽しくないなって気付いてさ。大学でこんなことやってても面白くないなって」
彼女は賑やかなガラスの向こうを見つめた。
「それは俺も同感だな」
「お前もか。俺も常々感じていたんだ」
幸助と、それに欽二も美奈に賛同した。
「じゃあ私たち、似た者同士かもね」
「よしじゃあ三人でじっくり話そうじゃないか。今そっちに行く」
と言って欽二はベランダの柵伝いに衝立を乗り越えようと体を乗り出した。
「待て待て待て。そんなことしなくても、俺らがそっちに行けば済む話だろうが」
「ああ、それもそうか。鍵は開けてあるからな」
言うと、欽二は引っ込んだ。
「行く?」
幸助が尋ねるが、美奈はどこか躊躇っている。
「この隣って男部屋でしょ?」
「そうだけど……大丈夫、俺たちフェミニストだから女の子に変なことはしないよ。だから安心してくれて良い」
「……うん」
「なんなら別の場所でもいいし、無理についてくることもないわけだし」
「ん、大丈夫」
「決まりだな」
幸助は部屋を出る前に新しい紙コップを三つくすねた。二人は廊下に出たところでちょうど部屋から出て来た臙脂のジャージを着た巨漢――欽二と出くわした。彼は幸助に鍵を手渡し、
「ロビーの自販機でジュース買ってくる」
「ああ」
「ありがとう」
二人で先に幸助ら男四人で使う和室に入った。この部屋の他の利用客はもちろん、隣室でゲームに熱中している。隣とは左右が逆なだけで構造は全く同じ。ただ一つ違うとすれば、布団が綺麗に敷かれていることぐらいだろう。その中の一つはやや乱れていた。
「あいつ寝てたんだな。まあどっか適当に座ってなよ。すぐに戻ってくるだろうし」
最初のコメントを投稿しよう!