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それぞれの布団を半分にたたんで中央を空けると、美奈は壁を背にくっつけて布団の上に座った。騒がしい部屋とは反対側の壁に、だ。
「もしかして、壁好き?」
先の部屋でも壁を背にしていたことから、彼は冗談半分で尋ねてみた。
「うん、壁際ってなんか安心するよね」
「でもそれはこれから人と話をしようって位置じゃないだろ?」
幸助が苦笑しながら言った。美奈は一人が壁にもたれ、それに二人が向き合う構図を想像してみた。それは入院患者と見舞客の位置関係に似て、怖気がした。
「それも、そうだね」
今度は、畳の上に正座する。その時欽二が帰ってきた。
「おかえり」
「なあ、紙コップ――」
「持ってきてる」
「――用意がいいな」
「まあな」
「アルコール買ってきてないが平気か?」
「全く」
「お前に訊いたんじゃない。そっちに」
視線で美奈を指す。
「うん、平気。私そんなお酒強くないから。それに……ほら、酔いつぶれた姿なんて、見られたくないじゃない?」
「確かに。介抱するのもされるのも遠慮したいからな。さて、それじゃ始めますか」
三人のコップにオレンジジュースが注がれ、彼らはささやかな乾杯をした。
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