Prologue 1:冬合宿

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 それぞれの布団を半分にたたんで中央を空けると、美奈は壁を背にくっつけて布団の上に座った。騒がしい部屋とは反対側の壁に、だ。 「もしかして、壁好き?」  先の部屋でも壁を背にしていたことから、彼は冗談半分で尋ねてみた。 「うん、壁際ってなんか安心するよね」 「でもそれはこれから人と話をしようって位置じゃないだろ?」  幸助が苦笑しながら言った。美奈は一人が壁にもたれ、それに二人が向き合う構図を想像してみた。それは入院患者と見舞客の位置関係に似て、怖気がした。 「それも、そうだね」  今度は、畳の上に正座する。その時欽二が帰ってきた。 「おかえり」 「なあ、紙コップ――」 「持ってきてる」 「――用意がいいな」 「まあな」 「アルコール買ってきてないが平気か?」 「全く」 「お前に訊いたんじゃない。そっちに」  視線で美奈を指す。 「うん、平気。私そんなお酒強くないから。それに……ほら、酔いつぶれた姿なんて、見られたくないじゃない?」 「確かに。介抱するのもされるのも遠慮したいからな。さて、それじゃ始めますか」  三人のコップにオレンジジュースが注がれ、彼らはささやかな乾杯をした。
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