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「そう。じゃあここで少し休憩してようか」
美奈はさっきまでいた場所にもう一度座り、菜摘はその隣に座る。脇に買い物袋を置くとガラス越しに外の様子を見、暑そうだなあと呟いた。視線を美奈に落とすと、彼女はハンカチを固く握った拳を膝の上に置いていた。
「美奈、あたしたち四人は友達、でしょ?」
「う、うん。そうだよね」
俯きがちだった顔を上げながら、美奈は答えた。
「友達に電話するのに緊張してどうするの」
「だって私、そういうの慣れてないし」
「『そういうの』ってどういうの?」
美奈は再び顔を伏せた。
「それは……いろいろだよ」
「例えば、電話で話すこととか、男の人と話すこととか、幸助と話すこととか?」
正解はどれ? と、菜摘は笑いかけた。
「か、からかわないでよ」
再び菜摘を見つめるその眼差しは、困惑の色と涙が滲んでいた。
「美奈が今までどんな友達と付き合ってきたのかは知らないけどさ、少なくとも友達ならこういうのは普通だよ? ましてや好きなら躊躇ってちゃダメじゃん」
美奈は目をぱちくりさせてからはは、と乾いた笑いを漏らした。
「うん、そんなの見てれば分かるよ。美奈があたしにサークル入らないかって誘った時に二人を紹介したでしょ。その時から何となく感じてたの。美奈はこの二人のどっちか、あるいは両方が好きなのかも知れないって」
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