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空想好きな少女は、自分たちが何かのパーティであるように考えていた。左前の大柄な青年を楽天的で豪放磊落な格闘家、右前の眼鏡の青年を慎重で理知的な剣士、そして自分は――差詰め、おっちょこちょいな魔法使いか。
彼女は今までこんな人と話したことがなかったから、彼らとのおしゃべりを心の底から楽しんでいた。最初は正座していたものの、うち解けてくると両足を横に投げ出し――いわゆる女の子座り――リラックスしていた。
「ふーん、なら今度貸してくれよ、その漫画」
欽二が、自分のコップにジュースを注ぎながら言った。
「ああ、悪い。それ実家だ。正月は実家に帰らないつもりだし――」
「まあ、俺もそうするつもりだからな。じゃあ春休みに頼むぞ」
「忘れてなければな」
コップを口に付けようとしたところで、視界に美奈の姿を捉えた。
「ところで天野さんは持ってる?」
「え、私?」
空想に耽っていた瞬間を突かれ、美奈はびくっと反応した。幸いにもコップの中は空だった。
「うん、天野さんもそのコミックス持ってるかって聞いたんだけど」
「えっと……ごめん、何の話?」
幸助がそのタイトルを言うと、美奈は首を振った。
「眠いの?」
「ちょっと。でも大丈夫だよ」
言いながら、オレンジを模したキャラクターが描かれたペットボトルに手を伸ばす。
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