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「天野さん、付いてきてくれるんだ?」
「……たかのくん、ここまで付き合っておいて、今さら仲間はずれなんて酷いよ?」
その格好のまま美奈は眉間に皺を寄せていじけた風に抗議する。そんな姿を見た幸助は僅かに笑みを見せた。
「おい幸助、そんな意地悪言うもんじゃない。それで天野さん、運動が出来ない、って言ったのは……何か事情があるのか?」
その時少女の心臓が震え、早鐘を打ち始める。次の言葉に戸惑っていると、幸助が口を開いた。
「意地悪なのはお前もだな。そういう事情には敢えて首をつっこまないもんだろ。天野さん、言いたくなかったら言いたくないで良いから」
本当のことを打ち明けるべきか数秒迷ってから、彼女は切り出した。
「私、昔から体が強い方じゃなくて、入院したこともあったんだ。軽い運動くらいなら出来るんだけど、激しいのは体への負担が大きいから、って止められてるの」
そこで二人の男は、この縮こまった少女の細い体躯を意識した。病的なまでに、というとやや語弊があるが、彼女の肌の白さは日に当たらない生活――入院か――を思い起こさせた。自身のそれとは比べるまでもなく、同じサークルの女子の中でも、やはり彼女の色は際立っていた。
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