Prologue 1:冬合宿

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         *  この外出の発端を遡るなら、昨年の末にまで及ぶだろう。その時美奈は面白そうだからという理由で入ったゲーム研究会なるサークルに所属していて、その冬合宿に参加していたのだ。  ゲーム研究会というのは、平たく言えば遊んで遊んで遊び倒そうという目的の、良く言えば享楽的な、悪く言えば堕落的なサークルである。  その範疇はテーブルトークRPGを皮切りに、携帯型ゲームやカードにボード、果てはバクチ(もちろん賭けるのは疑似コイン)まで幅広い。ゲームを通して部員同士での幅広い交流を図る、というのが主旨だ。  しかし、このようなサークルが冬合宿を敢行するというのは奇妙な話である(むろん夏合宿も行い、美奈はそれにも参加した)。結局やっていることはいつもと同じで、夜まで思う存分楽しめるのと、合間にアルコールを飲めることぐらいしか違いはない。一番の違いは畳の上で遊べることだろう。  だがもとより、楽しむことが存在意義と言ってもいいサークルだから、メンバーはそんなことなど歯牙にもかけない。ただある数人を除いては。美奈もつまらなそうにしているそんな一人だった。当時の彼女の髪は首筋にかかる程度の長さしかなかった。  時刻は午後十時を回った所である。二十数名のサークルのメンバーは夕食と風呂を済ませ、一つの部屋に集まってゲームに興じていた。その多くがジャージなど寝間着であるのに対し、美奈は白いカーディガンに紺のスカート、チェック柄のニーソックスという格好だった。  彼女は女子の輪に混じって大富豪(彼女らはこう呼ぶ)に興じていた。酒が回っているせいか周りのテンションは高く、それと対比して、いや比較するから一層、美奈の心持ちは沈んで見えた。
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