プロローグ

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幼い頃に事故で両親を亡くし、祖母に育てられた俺はろくな愛情も受けず、無表情で無感情……愛の意味すら分からずに生きてきた。 家でも邪魔者扱い、学校でも気持ち悪がられ、友達すら居なかったこの俺を、たった一人手を差し伸べてくれたのがお前だった。 暗闇をかきわけて、溢れだしたのは眩しい光で、まぶしくて耐えきれなくて両目をきゅっと閉じた。お前は俺に包み切れないぐらいの大きな光を、持ってきた。 はじめて交わしたキスは、ただほんの一瞬触れただけなのに味わったことのないでっかい愛で、というかはじめての愛で、混乱した。嬉しくて、暖かい心がほんわか真っ赤に弾んで涙になって溢れだした。 ぽろぽろ溢れる雫はお前の指で拭われて、「あんたが泣くと俺も泣いてまうやろ」って、再び重ねられた唇に二人で涙して、でも口元は俺もお前もにへにへ笑ってた。 こんなにも、優しい温もりは生まれてはじめてだった。 ×
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