第一章

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「なぁ、その前髪うっとぉない?」 「……別に…」 「俺の事見えてるん??そんなんで黒板の文字見えるんか?ていうか眼鏡の意味ないんちゃう?」 「ほっといて」 「うっといやろ?そんなんずっとやりよるの、見えるもんも見えへんくなるで」 「ほっといてったら」 「俺オカンの髪いっつも切ってあげてんねん。自分も切ったろか?」 「ーっ!う…」 「!」 「…っ、俺に…、関わらんといてくれ…!」 ただほんの一瞬気になっただけだった。クラスの片隅にぽつんと座る一つのカゲが。 雨が悪い。天気予報では気持ちの良い晴れだなんて言ってたくせに、…勿論傘なんて持ってきていない。 はぁっと溜め息をついて見つめた窓の先に一人、それが「すばる」だった。 前髪で両目を隠して、ひょろひょろでちょっと強く握っただけで折れてまいそうな手足、細い腰、そのくせ眼鏡なんてかけてダサダサ…… クラスの嫌われ者でいつも一人でおる奴や。雰囲気はの〇太君そっくりやのに頭はしっかりしてやんの… 無表情、無感情なんて言われて気持ち悪がられてる。 一瞬視界に入ったそいつが気になって、暇潰し程度にからかうだけのつもりやった。 ×
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