161人が本棚に入れています
本棚に追加
「なぁ、その前髪うっとぉない?」
「……別に…」
「俺の事見えてるん??そんなんで黒板の文字見えるんか?ていうか眼鏡の意味ないんちゃう?」
「ほっといて」
「うっといやろ?そんなんずっとやりよるの、見えるもんも見えへんくなるで」
「ほっといてったら」
「俺オカンの髪いっつも切ってあげてんねん。自分も切ったろか?」
「ーっ!う…」
「!」
「…っ、俺に…、関わらんといてくれ…!」
ただほんの一瞬気になっただけだった。クラスの片隅にぽつんと座る一つのカゲが。
雨が悪い。天気予報では気持ちの良い晴れだなんて言ってたくせに、…勿論傘なんて持ってきていない。
はぁっと溜め息をついて見つめた窓の先に一人、それが「すばる」だった。
前髪で両目を隠して、ひょろひょろでちょっと強く握っただけで折れてまいそうな手足、細い腰、そのくせ眼鏡なんてかけてダサダサ……
クラスの嫌われ者でいつも一人でおる奴や。雰囲気はの〇太君そっくりやのに頭はしっかりしてやんの…
無表情、無感情なんて言われて気持ち悪がられてる。
一瞬視界に入ったそいつが気になって、暇潰し程度にからかうだけのつもりやった。
×
最初のコメントを投稿しよう!