1.嫉妬

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   やがてジョッキを持って行った店員が、おしぼりに包んだ携帯をおずおずとあたしに差し出した。 「すいません……」  まだショックが続いてるあたしに、その店員はぺこぺこと頭を下げて何か言っている。  けど、何言ってるかはよく聞こえなかった。 「マナミ、帰んぞ」  おしぼりに包まれた携帯を持っているあたしの手を、突然ヒデオが無理に引っ張る。 「いた……な、何すんのよ!」 「帰るって言ってんだよ。馬鹿女」 「……!」  冷ややかに見下ろすその瞳に逆らうのが怖くて、あたしは引きずられるようにしてヒデオについていった。  外に出ると、ひんやりとした風。  温まっていない身体がぶるりと震える。 「ヒデオ」 「……」  あたしの手を掴んだまま、ヒデオは無言で歩いて行く。  その背中に描かれた感情は、明らかに怒り。  さっぱりその理由が判らない。  だから、それ以上声をかけるのは躊躇われた。 .
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