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「………………」
この車、オフロード仕様だったっけ。
そんな事を思いながらイヤホンから流れる音楽に耳を傾ける。
携帯は使えない。
ラジオをつけても何を言っているのか理解できない。
そんな中で彼が唯一娯楽としているのがこの音楽プレーヤーだ。
日本を出たのは数時間前なのに凄く昔の気がしてならない。
日本語も彼にとっては懐かしいものだ。
「……~……~!!」
気付けば音楽に雑音が入る。
プレーヤー自体に故障はない。
忘れていた。
自分以外にも日本語を使うものがこの車の中にいる事を。
「何?」
「何?……じゃねぇよ!人が話してる途中に音楽聞き出すな!
お前絶対話聞いてないだろ!」
「~~~~♪」
「耳にイヤホン戻すな!」
「はいはい、で、どうしたの?」
娯楽を邪魔されて若干不満げにイヤホンを外す少年。
「こンの、クソ息子め!舐めくさりやがって」
「裏表ない家族関係って素敵じゃん?」
「はっ倒すぞ隆二」
少年、隆二はニヤリと笑い、バックミラー越しに父親を見た。
「グレてないだけマシじゃない?父さん」
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