実はこんな場所なんです

3/33
前へ
/44ページ
次へ
少年、京極 隆二は友達がいない。 彼の名誉のために付け加える、友達をつくる機会が少なかったためだ。 彼の人生は世辞にも順風満帆とは言えなかった。 親の転勤を理由に一ヶ所に留まる事なく、全国を転々。 おかげで全国の名産品を空で言えるという無駄なスキルがついてしまった。 「転校ばっかで悪かったな……って言いたかったのにシリアスぶち壊しだよチクショー!!」 「自分の言動が一番シリアスをぶち壊してる事に気付いてくれ、父さん」 隆二の父、智明も引け目を感じているらしいが、如何せんアホな人なのでどうしても隆二も真面目に向き合えない。 どうせ音楽を聞いていた時も8割ネタなのだろうと決めつけている始末。 「別にいいよ。いつもの事だし、もう慣れたよ」 自分の人生もそんな調子で割り切っている。 アホな父親のアホはもう治らないのと同じで転校もどうにもならないとある意味受動的な人生を送っている。 「友達作ったって大人になればどうせ関わりなくなるんだし」 妙に言い訳臭いのは隆二がこの環境を受け入れていても寂しい思いはしているという裏返し。 と、そこであまり快適とは言えない、舗装されていない道を走り続けていた車が突然活力を失い、ゆったりと速度を落としていく。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

870人が本棚に入れています
本棚に追加