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レジチーフは店長の気持ちを汲み取るように微笑みながら返事を返した。
「はい。そうですね。
飯田さんにカウンターの仕事は頼みます。」
店長とチーフのやりとりを知る良しもない渡邊は自分を偉大なる存在と思い込む。
スーパーで勤務すると誰もが勘違いしてしまいがちな落とし穴である。
《自分がいなくなったら絶対に困る》
そんなことは絶対にない。
《自分がいなくても店はまわる》
《自分の代わりは誰でもできる》
世の中はそんなものなのだ。
調子に乗って言いたい事を言っていれば煙たい存在になりお払い箱である。
もはや店に渡邊を惜しむ人間はいない。
むしろ心なしか渡邊の退職を聞いてレジスタッフ達は笑顔が増えたように明るい。
実は自分が煙たい存在と言う状況を最後まで知らないまま退職した渡邊は新しいバイト先を勢いで探し今も勤務中である。
若すぎる年齢層の中で浮いている渡邊は自分自信の地の姿も出せないまま働いている。
やはり戻りたい渡邊は何度となくサイオスに買い物に訪れては様子を伺うようにチーフに声を掛けてみるが期待の言葉はない。
以前の渡邊のポジションは飯田が満面の笑顔でカウンターを仕切っている。
もう完璧に渡邊の影は店に残っていない。
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