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どうしたらいいんだろうか
…という独白を
心の中で呟いてみる。
だけどそれで事態が何か好転する訳でもないし前進もしない
別段慌てている訳でも無い
熟考という程の時間ではなく
二、三分状況の整理をした後
自分の脳内が一体どう判断を下したのか(恐らく無意識に)私はしばらくしたら無音になった扉の鍵を空けていた。
「…あっ!あのごめんなさい
驚きましたよね…すいません
迷惑…ですよねいきなり申し訳ありませんです…」
「…………………」
開けた瞬間いきなり平身低頭で私に謝りまくってきた。
今日日、こんな慇懃さに輪をかけたような慇懃な謝り方をされるのはお姉ちゃん以来だ。
なんだか懐かしくなって
私は またも棒立ちでその不法侵入さんを見つめる形になる。
「……えと……」
「………………」
気まずそうに
私を見ている不法侵入さん。
洞のような眼でじっと、
私が見ていたので気味が悪いと思われたのかもしれないが。
無言の時が過ぎる
――結局の所
「…あの、わたし お邪魔してもいーんでしょうか…?」
そう口火を切った不法侵入さん
いや“不法侵入さん”という認識を改め“訪問者さん”として
「…どう ぞ」
私は家に招きいれる事にした
さも旧知の知己の如く――
見知らぬ異邦人を招いた。
という瑣末の後、現在。
目の前の訪問者さん
いや…紅さんは
テーブルの向かい側に座り
物珍しそうな眼で私の部屋中を
きょろきょろと
まるで、好奇心旺盛な子供の様に見渡している。
物色してるのかもしれない
どちらにしても
さして変わりない表現だけど
紅茶を煎れながら
…私は考えていた。
人と会話を交わしたのは
いつ以来だったか、と。
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